不動産契約の電子化の流れで「契約」はどうなるのか?について解説します。

不動産で電子契約が進まなかった理由

これだけIT化が言われているのに不動産業界の契約でIT化が進まなかったことに疑問をもつ方も多いと思います。

「不動産業界は古いよね」
「契約書をPDFにしてきてくれたら保管も楽なのに」

こういった意見をお持ちの方もいると思います。

不動産業界でも業務効率やDX(デジタルトランスフォーメーション)などは当然時代に応じて進めていきますし進めなければなりません。
しかし、不動産業界でこれまで電子化ができなかったのは、「法律」による決まりが原因だったのです。

宅地建物取引業法

第三十七条 宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換に関し、自ら当事者として契約を締結したときはその相手方に、当事者を代理して契約を締結したときはその相手方及び代理を依頼した者に、その媒介により契約が成立したときは当該契約の各当事者に、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。

一 当事者の氏名(法人にあつては、その名称)及び住所
二 当該宅地の所在、地番その他当該宅地を特定するために必要な表示又は当該建物の所在、種類、構造その他当該建物を特定するために必要な表示
二の二 当該建物が既存の建物であるときは、建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者の双方が確認した事項
三 代金又は交換差金の額並びにその支払の時期及び方法
四 宅地又は建物の引渡しの時期
五 移転登記の申請の時期
六 代金及び交換差金以外の金銭の授受に関する定めがあるときは、その額並びに当該金銭の授受の時期及び目的
七 契約の解除に関する定めがあるときは、その内容
八 損害賠償額の予定又は違約金に関する定めがあるときは、その内容
九 代金又は交換差金についての金銭の貸借のあっせんに関する定めがある場合においては、当該あっせんに係る金銭の貸借が成立しないときの措置
十 天災その他不可抗力による損害の負担に関する定めがあるときは、その内容
十一 当該宅地若しくは建物が種類若しくは品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置についての定めがあるときは、その内容
十二 当該宅地又は建物に係る租税その他の公課の負担に関する定めがあるときは、その内容

2 宅地建物取引業者は、宅地又は建物の貸借に関し、当事者を代理して契約を締結したときはその相手方及び代理を依頼した者に、その媒介により契約が成立したときは当該契約の各当事者に、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。

一 前項第一号、第二号、第四号、第七号、第八号及び第十号に掲げる事項
二 借賃の額並びにその支払の時期及び方法
三 借賃以外の金銭の授受に関する定めがあるときは、その額並びに当該金銭の授受の時期及び目的

3 宅地建物取引業者は、前二項の規定により交付すべき書面を作成したときは、宅地建物取引士をして、当該書面に記名押印させなければならない。

この「宅地建物取引業法(以下「宅建業法」)」を読んでいただくと、お気づきの方もいると思いますが、文中に「書面を交付しなければならない」とあります。
この「書面を交付」があることで、「紙を用いる」ことが絶対になるために、電子化が進まなかったのです。

厳密には「不動産契約」と「書面交付」は別もの

日本では「契約自由の原則」があるので、厳密には「不動産契約」と「宅建業法で三十七条を守る」は別の話ではあります。

「契約自由の原則」

  • 契約締結の自由
  • 相手方選択の自由
  • 内容決定の自由
  • 方式の自由

法律に違反をしなければ、契約内容はどんな形式でも大丈夫なので、言ってしまえば、

  • 契約書は作成してもしなくてもいい
  • 契約書を作成しても中味はどんなものでもいい

ということなのです。しかし「不動産」の契約は、金額が高額であり財産価値も大きいことから、トラブルリスクはどうしても高くなります。そういったトラブルを回避する上で専門知識、不動産取引の実務経験があることが求められ、「不動産会社」が登場することになりました。

不動産仲介を担う宅地建物取引士(以下、「宅建士」)が契約書を作成します。この契約書は過去の契約トラブル事例を踏まえ、双方に不利益が出ないようにするためのノウハウの蓄積結果と思っていただくのが良いと思います。
そしてこの時「宅建士」が遵守するのが「宅建業法」になります。
その宅建業法の第三十七条に「宅建業者は契約が成立したら下記の内容を記載した書面を交付しなければならない。」とあります。
三十七条書面は、「宅建業者」が作成し、「宅建士」が記名押印した上で、契約後に遅滞なく「売主」「買主」に書面を交付しなければなりません。

そしてこの「三十七条書面」の記載内容には、不動産における契約の詳細として下記が設けられています。

必ず記載する事項

  • 当事者の氏名・住所
  • 宅地建物を特定するため必要な表示
  • 建物の構造上主要な部分等の状況について当事者の双方が確認した事項(中古)
  • 代金の額、支払時期、支払方法
  • 引渡時期
  • 所有権移転登記申請の時期

取決めがあれば記載する事項

  • 代金以外に授受する金銭の額、授受の時期、目的
  • 契約の解除に関する事項
  • 損害賠償額の予定または違約金に関する定め
  • 住宅ローンが成立しない時の措置
  • 天災その他不可抗力による損害の負担に関する定め
  • 契約不適合責任の履行に関する措置
  • 清算金に関する事項

この「三十七条書面」は「不動産会社(宅建業者)」への義務です。
しかし「契約書」は、実際には「売主・買主」間での取り決めなので、不動産会社は全く関係がないのです。

ですが、実際には「契約書」に必要な項目が、先程の「宅建業者が作成する三十七条書面が、契約時に必要な項目とほぼ同じ項目」になります。
そのため事実上「三十七条書面が契約書を兼ねる」ことで運用されているのです。
そして「三十七条書面は書面で提供が必要」です。

結果として「不動産契約」時には、

  1. 契約書と三十七条書面を兼ねる
  2. 三十七条書面は紙で記名・押印したもので提供が必要
  3. 契約は電子化ができない

という流れから電子化が進められない要因となっていたのです。

不動産電子契約が全面的に解禁になるのはいつごろ?

2021年5月に国会で「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案」(以下、デジタル改革関連法案)が成立しました。
この法案の中には「宅建業法」の改正が含まれていました。
これまで宅建士の押印と、紙での書面交付が必要だった重要事項説明書と契約書の電子契約が可能になったのです。
このデジタル改革関連法案の施行日は2021年9月1日ですが、宅建業法に関わる施行については公布から最大で1年間の猶予があります。つまり、2022年5月より、

  • 宅建業法の改正
  • 契約時の押印廃止

となり、三十七条書面の電子化が可能になります。
実はこれまで、賃貸借契約書については契約更新時の電子契約は可能だったものの、宅建業法の規定により、新規契約の際に電子署名を活用することはできませんでした。

しかし、今回、重要事項説明書と合わせて電子署名を実施できるようになったことで、不動産管理業務における「ペーパーレス化」「書類作成コストの削減」の推進が可能になります。

2021年5月の法案成立は不動産業界において、長年の慣習を変える大きな契機となりました。

電子契約は大丈夫なの?

では「電子化」によってどういった変化があるでしょうか?

電子契約の定義は契約締結行為をオンラインで行うことを言います。
不動産契約の事前に重要事項説明をテレビ会議(テレカン)などを通じて行う「IT重説」を含めて「電子契約」と位置づけるケース、また契約行為のみを「電子契約」と位置づけるケースがでてくると思います。

電子契約で問題になるのは「契約書の真正さの担保」です。
これまでの「押印」「サイン」に変わる方法として「電子署名」が使われます。この「電子署名」が付与された契約は当事者が行った行為と同様という法的な担保がされています。

なお、真正さの担保の手段として、書類の複製ができないようにするために、仮想通貨で有名な「ブロックチェーン」という技術を用いている場合もあります。

電子署名において重要になってくるのは「本人確認」です。
これまでは対面であったが故に、本人確認書類等の提示などを含めてできていたアナログな本人確認ができなくなります。

そのために現在一般的な認証として「メール認証」が用いられています。(メールアドレスを登録するとメールが届き、その文面に記載のURLをクリックして、実在確認を取る、という方法)

しかし、メールアドレスは現在誰でもいくつでも所有が可能です。契約時のメールアドレスが数年に渡って必ず利用される保証はなく、他者がなりすましのメールアドレスを取得する可能もあります。そこで、不動産会社との連絡において「契約行為以前から利用しているメールアドレス」であることが求められることにもなるでしょう。

また、「メール認証」よりも、より厳格な方法として「高度電子署名」が用いられる場合があります。第三者機関である電子認証局が審査を行い、本人の身元確認を済ませた上で電子証明書を発行する、という方法です。

不動産関係の電子契約サービスには、上記の「メール認証」「高度電子署名」の2通りの電子署名を行う場合や、「メール認証+アクセスコード認証」などで行う場合もあります。

これらの技術を使って「契約書の真正さ」を担保する仕組みはすでに準備、構築されているので、契約者にとって不安材料は極めて低くなっています。

電子契約で契約者は何が便利になるのか?

これまで紙の書類を作成して、売主・買主といった契約者や不動産オーナーに郵送、返送した書類の管理、という業務が不動産取引には発生していました。

契約書の作成、郵送にかかるコストは大幅に削減されることになります。
レターパックを使用している場合は1件の書類送付につき370円、書類作成にかかる人件費や紙代・印刷代・管理代等を含めれば1件書類を送付するだけで700円以上のコストがかかっていました。
これらのコストは「不動産契約」の中に含まれていたことになります。

また電子契約は不動産会社だけではなく契約者にとってもメリットがあります。

  • 送られてきた郵便物に気づきにくい入居者でも、電子契約のお知らせ(メール)ならすぐに開封して見ることができる。
  • 直接店舗に行く必要がないため重要事項説明や契約締結の日程調整がしやすい
  • コロナウィルス流行の社会状況において、非接触・非対面での契約が可能になる
  • 遠方移動が必要な引っ越しなどで契約をする不動産店舗から遠くに住んでいたり、高齢で遠出が困難なお客様でも手軽に手続きできる

特に新社会人になるために地元を離れ、新たに不動産を契約する際など、契約のために入居者様に加えご両親様の移動も伴う場合など、メリットを実感いただけると思います。

不動産契約における電子化は「デジタル改革関連法案」成立によって、これまでの慣習改善の扉がやっと開きました。
不動産会社は先の法案成立を受け、電子契約の仕組みをこれから導入していくことになりますが、不動産業界全体としてはまだまだこれからではあります。

一方、一誠商事ではすでにお客さまへの利便性向上を見据え、賃貸物件においてはいち早く「IT重説」「不動産契約の電子化」に取り組んでいます。

茨城県南で地域密着、創業49年、県内で11店舗、管理戸数22,000を誇る一誠商事では、今後もお客さまのお部屋探しのサポートのための改善をしてまいります。

ぜひ当社にお部屋探しの際には当社にご連絡をいただき、電子契約の利便性をご経験ください。

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記事の監修者:一誠商事編集部

一誠商事株式会社が運営する情報サイト編集部。

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