2025年の省エネ住宅の義務化で変わることは?基準・種類や気を付けたい点も紹介
建築物の省エネに関する法律が改正され、2025年4月からはすべての新築住宅・非住宅に対して、省エネ基準への適合が義務化される予定です 。これから住宅を新築する場合、どのような点に注意すればよいのでしょうか。
今回は、省エネ住宅の基準・種類など、住宅の省エネに関する基本事項について解説します。併せて、省エネ義務化で押さえておきたいポイントや、住宅の建築・購入時に気を付けたい点なども紹介します。
目次
省エネ住宅の基準・種類とは
2025年の制度改正について解説する前に、まずは省エネ住宅の基準・種類について解説していきます。
省エネ住宅の基準
省エネ住宅(省エネルギー住宅) の基準は、「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」 に基づいて定められています 。1980年に制定 された基準は法律の改正ごとに強化され、現在は「外皮性能」と「一次エネルギー消費量」の2つが住宅の省エネ基準 となっています。
それでは、それぞれの基準について見ていきましょう。
外皮性能
外皮性能とは、建物の壁や天井、窓などの断熱性能や日射遮蔽性能を指します 。 UA値(外皮平均熱貫流率)とηAC値(平均日射熱取得率) という2つの指標があり、省エネ住宅と認められるには、これらの値が基準値以下でなければなりません。
- UA値(外皮平均熱貫流率)
断熱性能を表す。値が小さくなるほど熱が出入りしにくく、断熱性能が高まる。 - ηAC値(平均日射熱取得率)
日射遮蔽性能を表す。値が小さくなるほど日射が入りにくく、遮蔽性能が高まる。
なお、日本には温暖地や寒冷地があるため、地域によって基準値が異なります。例えば、関東圏では以下のように、地域区分や外皮性能の基準値が設定されています。
等級 | 外皮 | 地域区分 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
性能 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | |
7 | UA ηAC |
0.2 – |
0.2 – |
0.23 – |
0.26 3.0 |
0.26 2.8 |
0.26 2.7 |
– – |
6 | UA ηAC |
0.28 – |
0.28 – |
0.34 – |
0.46 3.0 |
0.46 2.8 |
0.46 2.7 |
– 5.1 |
5 | UA ηAC |
0.40 – |
0.50 – |
0.60 – |
0.60 3.0 |
0.60 2.8 |
0.60 2.7 |
– 6.7 |
4 | UA ηAC |
0.46 – |
0.56 – |
0.75 – |
0.87 3.0 |
0.87 2.8 |
0.87 2.7 |
– 6.7 |
3 | UA ηAC |
0.54 – |
1.04 – |
1.25 – |
1.54 4.0 |
1.54 3.8 |
1.81 4.0 |
– – |
2 | UA ηAC |
0.72 – |
1.21 – |
1.47 – |
1.67 – |
1.67 – |
2.35 – |
– – |
1 | UA ηAC |
– – |
– – |
– – |
– – |
– – |
– – |
– – |
※スマートフォンでは横スクロールします。
●地域区分
8:小笠原村
7:横須賀市、利島村、館山市、勝浦市 など
6:東京23区、横浜市、前橋市、日立市、千葉市、さいたま市 など
5:水戸市、桐生市、飯能市 など
4:大子町、奥多摩町、高崎市 など
3:高山村、長野原町、上野村、川場村
2:草津町、嬬恋村、片品村
一次エネルギー消費量
一次エネルギー消費量とは、住宅で使用するエネルギーの総消費量のことで、基準値と照らし合わせて削減量を評価します。
エネルギー消費量を評価するのは、暖冷房・換気・照明・給湯・その他設備のエネルギー の5つです。省エネ手法を考慮したエネルギー消費量の合計を、標準的な仕様を採用した場合のエネルギー消費量の合計で割った値が基準値以下 の場合、省エネ住宅の基準に適合します。
省エネ住宅の種類
省エネ住宅には、長期優良住宅・ZEH住宅、LCCM住宅、性能向上計画認定 住宅 などの種類があります。各住宅の特徴は以下のとおりです。
長期優良住宅
バリアフリー性や耐震性など、認定制度の項目をクリアしている住宅
ZEH住宅
高い省エネ性能を持つ設備とエネルギーを創出する設備を導入し、一次エネルギーの消費量を1年間で実質ゼロにする住宅
LCCM住宅
住宅を建築して解体するまでの期間を通して、二酸化炭素の発生量を結果的にマイナスにする住宅
性能向上認定住宅
一定の省エネ基準を満たす住宅
ZEH住宅およびLCCM住宅については以下の記事で詳しく解説しているため、併せてご覧ください。
省エネ住宅の義務化で変わる2つのポイント
「2050年カーボンニュートラル 」の実現に向けて、建築物の省エネ性能の強化などをするために、2022年6月に建築物省エネ法が改正されました。
法改正にともない、2025年4月からすべての新築住宅と非住宅において、省エネ基準の適合が義務化される予定です。省エネ基準適合の義務化について、2つのポイントを解説します。
省エネ基準適合が義務付けられる
2025年4月から着工するすべての新築住宅・非住宅に対し、省エネ基準適合が義務化されます。
現行法では、300㎡未満の小規模な住宅に対しては説明義務、300㎡以上の大・中規模の住宅に対しては届出義務が課されていました。しかし改正法の施行後には、現行法で適用が除外されている建築物や10㎡以下想定の建築物を除き 、原則はあらゆる規模の住宅に対して省エネ基準の適合義務が課されます。建築物の増改築をする際には、省エネ基準適合が増改築部分のみに求められます。
なお、省エネ基準では求められる断熱性能が定められています が、この断熱性能に関する等級(断熱等級)にも変更が生じています。具体的には、2022年に「住宅の品質確保の促進等に関する法律」 の改正により、断熱等級が3つ新設(等級5~7)されて等級が7つに増えました。2025年以降には等級4が最低等級になるなど、省エネ基準が引き上げられる予定です。
「適合性審査」が建築確認時に実施される
改正法の施行後には、建築確認手続きのなかで省エネ基準の適合性審査が行われるため、省エネ関連の書類提出が必要になります。
適合性審査では「省エネ性能確保計画」を所管行政庁か登録省エネ判定機関へ提出して、省エネ基準に適合しているか判定するなどのやり取りが必要です。ただし、仕様基準を用いた場合などは、適合性判定が省略される予定となっています。
なお建築確認とは、地盤や建築物が建築基準法などに適合しているか、建築工事へ着手する前に確認することです。建築確認時点で省エネ基準に適合していなかった場合、着工や住宅使用開始が遅れる可能性があります。
省エネ住宅を建築・購入する際に気を付けたい点
法改正を受けて、省エネ住宅を今後建築・購入する際には、どのような点に注意すればよいのでしょうか。注意すべきポイントを3つ解説します。
「創エネルギー」も取り入れる
二酸化炭素の排出量削減のために省エネに努めても、省エネだけでは不十分です。太陽光発電や蓄電設備などの創エネルギー設備を取り入れると、住宅でのエネルギー消費を相殺でき、二酸化炭素の排出量も抑えられるでしょう。
さらに、創エネルギーを利用すると電気料金を削減できるほか、災害時などの停電対策にもなります。
住宅ローン減税は省エネ基準で変わる
住宅の新築・購入を支援する「住宅ローン減税制度」の借入限度額は、住宅の省エネ基準に応じて変わります。
新築・買取再販の住宅の場合は段階的に変わり、既存住宅の場合は省エネ基準を満たす住宅が3,000万円、その他の住宅が2,000万円となります。省エネ性能が高い住宅ほど、借入限度額が高くなるのが特徴です。
なお、2024年・2025年入居より、新築・買取再販の住宅に対する借入限度額の引き下げが予定されています。2024年以降から変更となる住宅ローン減税については、下記記事で詳しく解説していますので、併せてご確認ください
2024年の住宅ローン減税で何が変わる?活用時の注意点や手続き方法も解説
各種補助金がある
省エネ住宅を推進するため、ZEH支援事業や地域型住宅グリーン化事業など、ニーズに応じて補助金制度が設けられています。省エネ住宅を建築・購入する際は、利用できる補助金制度がないかあらかじめ調べておくとよいでしょう。
省エネ基準は段階的に引き上げられる方向性
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて法改正が進むなか、省エネ基準は今後も段階的に引き上げられる可能性があります。国土交通省は、省エネ基準の段階的な引き上げについて、以下のような方針を示しています。
- 2030年には、新築についてZEH・ZEB水準の省エネ性能の確保を目指す
- 2050年には、ストック平均で、ZEH・ZEB水準の省エネ性能の確保を目指す
将来的には、さらに省エネ性能が高い住宅が求められる見通しとなっています。今後住宅を新築・改築等する際は、住宅をとりまく省エネ関連の法令や制度へも注視が必要になるでしょう。
まとめ
環境負荷軽減のため、2025年からすべての新築住宅・非住宅に対して、省エネ基準への適合が義務付けられます。省エネ基準には外皮性能と一次エネルギー消費量の2つがあり、これらの基準は今後の制度改正でさらに引き上げられる予定です。
これから住宅の新築・改築を予定している方は、省エネ基準について知り、基準を満たすにはどうすればよいか考えておきましょう。
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