近年働き方改革の動きもあり、「転勤」の減少の話もありますが、会社によって様々で転勤は珍しいものではありません。しかし家族や持ち家をお持ちの方にとっては、決して簡単な問題ではありません。ご家族の生活のこともありますが、「購入した自宅はどうすればいいのか?」と途方に暮れることも少なくないと思います(一般的には持ち家を理由に会社からの転勤辞令を断ることはできないとされています)。
今回は転勤となった場合に「持ち家」をどのようにするのかご紹介したいと思います。
目次
転勤における赴任の仕方を考える
転勤が決まったとき、まず決断しなければならないことは次の点です。
- 家族は持ち家に居住し、単身赴任をする
- 家族同伴で赴任をする
転勤の辞令が出た時、単身で赴任するか家族同伴で赴任をするのかを1番に決めなければなりません。しかしお子様がいる場合には転校を伴い、進学などの計画にも影響があるでしょう。そもそもその転勤による赴任が短期なのか長期なのかも考慮しなければなりません。またその転勤によって、その後の会社における地位の変化なども検討材料に含まれるかもしれません。
これからご紹介するメリット・デメリットを踏まえ、検討をしていただくのが良いと思います。
単身赴任でのメリット・デメリット
メリット
単身赴任のメリットとしては、お子様がいらっしゃるご家族の場合、転園、転校などが不要です。家族同伴の場合には、当然お子様は転園、転校をしなければならなくなります。お子様の人間関係、住環境、生活環境を変えずに済むことは最大のメリットと言えます。
またお子様がいないDINKS(Double Income No Kids、お子様がいなくて夫婦共働き)の場合には、配偶者が退職をして転勤先で仕事を探す、というようなことになります。キャリアや収入面も変化し、人生設計にも影響が出てくるでしょう。単身赴任であればその影響も払拭できることがメリットと言えます。
また金銭面でいえば、住宅ローン控除(減税)が引き続き受けられることもメリットとなります。
「住宅ローン控除(減税)」とは、個人が住宅の購入やリフォームを行った際、銀行から返済期間が10年以上の住宅ローンを受けて住宅を購入した場合、10年間の適用期間に渡って、住宅の用に供した年に応じて所定の額が所得税から控除される制度です。
住宅ローン控除(減税)は、単身赴任の場合には引き続き住宅ローン控除(減税)の継続適用が可能です。しかし、家族全員で引っ越しをしてしまうと、再度持ち家に居住するまで住宅ローン控除(減税)を適用することができないのです。しかも再度居住した際に住宅ローン控除(減税)の再適用は認められていますが、控除期間の延長はされず10年の適用期間の残存期間までしか適用されないのです。
単身赴任の場合、転居する方の住民票は単身赴任先に異動して構いません。しかしご家族の住民票はそのままにしておくことで、住宅ローン控除(減税)が適用されます。
留意点は「転勤先が国内か海外か」です。
転勤先が海外の場合には、基本的に住宅ローン控除(減税)の適用をうけることができません。この制度は、その適用を受ける年の12月31日に契約者が「日本に住んでいる」ことが適用のための要件になっているからです。
しかし平成28年4月1日以降にマイホームを購入した方の場合、海外転勤でも一定の要件を満たすことで住宅ローン控除(減税)の適用が可能ですので、確認しておくことをおすすめいたします。
デメリット
単身赴任をすることと決めた場合、一般的には「家族は持ち家」、転勤者は赴任先で「賃貸物件」を借りて生活、ということになります。二重の住宅事情となり、経済的な負担も大きくなるため、「単身赴任先の家賃を払いながら、持ち家のローンを支払えるのか?」という点は大きな不安材料です。
一般的には、単身赴任先の家賃は、「住宅手当」が会社の規定などで決められており支給されることが多いです。会社によっては単身赴任手当の一部として家賃補助が支給される場合もあります。しかしその額や手当の中身は会社ごとに異なります。手当が少ない場合には、赴任期間が長期になると経済的な負担も大きくなってしまいます。
そのため、転勤にあたっての諸手当の有無や支給額などをまず確認し、単身赴任をしても持ち家の住宅ローンの支払いを余裕をもって続けることができるかを試算する必要があります。
また単身赴任先の新居用に家具など購入する費用が必要であったり、食費や光熱費も2拠点に分かれることで、家計としては出費が増えることが想定されます。
また最大のデメリットといえるのは、転勤によってご家族と会えなくなることです。ご家族と離れてしまうために、ご家族との時間を大切にしている方とっては大きなストレスとなってしまいます。それは単身赴任をする方のみならず、ご家族にとっても同じです。
家族同伴で赴任するメリット・デメリット
家族同伴で赴任をする場合に、考えるのは持ち家の取り扱いです。この場合に検討される方法は次の3点となります。
- 賃貸物件として貸し出す
- 空き家のままにする
- 売却する
賃貸物件として貸し出すメリット・デメリット
メリット
賃貸に出すことの最大のメリットは「賃料収入」があげられます。
また、一般に家は空き家のままにしておくと傷んでしまいます。むしろ人が住み、空気の入れ替えや掃除などを継続する方が長持ちするのですが、賃貸に出すことで入居者の方にそういった維持管理をしてもらうことが可能になります。
持ち出すコストも賃貸借契約を締結する上での「仲介手数料」や管理会社へ支払う「管理委託料」程度ですので、大きな出費にはなりません。
デメリット
デメリットとして挙げられるのは、持ち家を他人に使われる、という点になります。ご自身と同じだけ大事に使ってもらえるかは不明です。破損、汚損するなどといった可能性はあるでしょう。
また転勤期間が変更になっても、賃貸人がいる場合にはこちらの都合で容易に契約を解除することはできません。そのため転勤が終わったのに自宅に戻れない、というケースも考えられます。
これらを考えて賃貸契約の形を「普通借家契約」と「定期借家契約」のどちらにするか考える必要があります。
転勤の期間が決まっている場合には、入居者とは「定期借家契約」を締結する方がいいでしょう。「定期借家契約」であれば、入居時に取り決めた期間を過ぎると借主は退去します。しかし期間が決まっているために、家賃を比較的安く抑える必要があります。
「普通借家契約」の場合には、借主が希望すれば、原則として契約を更新して貸し続ける必要があり、長期間に渡ることも考えられます。。家賃収入は得られますが、転勤が終わった後に自宅に戻ることができるかは不明です。
また、転勤中に賃貸に出していた家を売却しようとした時のことも考慮しておく必要があります。物件を賃貸に出している間は「収益物件」という扱いになります。ファミリー向けの賃貸物件は、単身者向けのワンルームなどと比べ収益性が低くなることが一般的です。そのため売却時の査定が厳しくなる可能性があり、売却そのものが難しくなる可能性があるためです。
空き家のままにする
メリット
空き家のままにしておく選択肢もあります。この場合のメリットは賃貸契約でのトラブルもなく、売却のための手間などもありません。
また、転勤が早く終わった場合などもすぐに持ち家に戻ることが可能です。
デメリット
デメリットとして考えられるのは持ち家の維持管理です。住宅は人が住み、空気の入れ替えなどを定期的にしておかないと劣化が早まる可能性があります。
また、持ち家の住宅ローンと転勤先の家賃を二重に支払うことになります。ファミリータイプは一人暮らしに比べて家賃が高くなり、負担も大きくなります。
先程ご紹介をした「住宅ローン控除(減税)」についても、持ち家には居住をしていないので、12月31日時点で空き家の場合はその年から住宅ローン控除の対象外となります。
住宅の保安の意味でも気を配る必要があります。近隣の方にとっては持ち家が「空き家」になっていることは分かります。その場合に、空き巣などに荒らされたりしないようにしなければなりません。
それ以外にも、通気・換気、通水、庭木の確認、郵便物の整理などを含めた維持管理として、空き家となった持ち家を定期的に巡回してくれるサービス利用を考えるのが良いでしょう。プロに任せることができるために安心です。
一誠商事でも「空き家管理サービス『巡回くん』」を提供しております。
しかしながら持ち家の安全のためとはいえ、賃料収入がない中で支出のみが増えることになるため、経済的な負担がどうしても高くなってしまうのが最大のデメリットといえます。
売却する
メリット
転勤の期間が比較的中長期になることが想定されている場合には、売却を選択するのも得策と思われます。
売却ができれば持ち家の維持管理や固定資産税の支払いが不要となり、経済的な負担が軽くなります。また、売却によって住宅資産の現金化が可能です。
住宅は経年劣化をしていくことで、どうしても資産価値が減少してしまいます。しかし、早期に売却してしまうことで、資産価値を確定させることができます。
ここで得られた現金は、転勤先での新たな生活のための費用のみならず、転勤先での住宅購入のための資金に充当することも可能となり、ライフプランの選択肢が増えることになります。
また、転勤期間の変更にも持ち家のことを考慮せずにすみ、柔軟な対応ができます。
デメリット
売却におけるデメリットは、売却額がローン残債を上回らない場合、オーバーローンとなることです。オーバーローンになった場合、売却で得た金額にさらに自己資金を加えて住宅ローンを返済することになります。その意味ではオーバーローンの場合には売却そのものが難しくなります。
売却そのものにも、仲介手数料や印紙代などの諸経費がかかります。
また、転勤後に元の地域に戻ってきた時には、改めて物件探しをする必要があります。不動産を購入する場合には、不動産取得税、仲介手数料、諸経費を再び払うことになります。
なお、金融期間によっては、買い替えローン(住み替えローン)を利用することで、住宅ローン残高の方が多くても買い替えできる場合があります。転居地で新たな住宅購入を検討する場合は、複数の金融機関に相談してみることをおすすめします。ただし、買い替えローン(住み替えローン)を組む場合には、住宅ローンの残高が現時点より増える可能性が高くなります。返済計画をしっかりと検討する必要があります。
まとめ
転勤が決まった時に持ち家をどうするのか?に決まった正解はありません。ご家族の状況や持ち家の築年数、転勤の年数などを検討してベストな方法を考える必要があります。
それぞれのメリット・デメリットは異なってきます。
一誠商事では賃貸、売買もどちらも取り扱っております。
またお客様の資産活用を支援するために
- 賃貸として貸し出す
- 現金化するために売却する
- 空き家のままにしておきたいので巡回サービスを受ける
等のお手伝いが可能です。
持ち家の取り扱いをどうするかが決まっていなくても、転勤の辞令が出たら、早い段階でご相談をいただくことをおすすめしています。早めに動いていただくことで、さまざまな選択肢の検討が可能になり、結果としてお客様にとって満足いただく方法を選んでいただけるからです。
今回のコラムをお読みいただき、ご興味をお持ちの方は、最寄りの一誠商事まで、まずはご相談ください。
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記事の監修者:一誠商事編集部
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