アパート経営は、健全な経営をしていれば、比較的赤字になりにくいといわれています。しかし、「実際に赤字になってしまった」という方や、「赤字になったらどうすれば良いのか」と疑問に思う方もいるでしょう。
この記事では、アパート経営における「赤字」の意味を解説したうえで、赤字になる代表的な原因と対策を紹介します。アパート経営の今後の方向性を決めたり、アパート経営を始めたりする際の知識として、ぜひ参考にしてください。
アパート経営は儲からない?理由や利益を出すための6つの対策を紹介
目次
アパート経営における「赤字」の基礎知識
アパート経営の「赤字」には、会計上とキャッシュフロー、それぞれの赤字があり、両者は異なる意味を持ちます。
ここでは前提知識として、会計上の赤字とキャッシュフローの赤字の概要を解説します。
会計上の赤字とは
会計上の赤字とは、確定申告時の不動産所得が赤字になることです。帳簿上で、アパート経営の「収入-支出」がマイナスになっている状態を指します。
アパート経営の必要経費のうち「減価償却費」は、実際の現金支出はないものの、帳簿上は支出として記載します。よって、実際は黒字でも、帳簿上は損失が大きく見えるでしょう。
このようなケースでは、赤字になったからといって、すぐに焦る必要はありません。
なお、アパート経営の収入や費用について詳しくは、以下の記事をご覧ください。
アパート賃貸経営の収入はどのくらい?収入・支出の内訳を理解して所得を最大化しよう
キャッシュフローの赤字とは
キャッシュフローの赤字とは、手もとの現金が不足し、赤字になることです。会計上の赤字とは異なり、アパート経営の実際の収支がマイナスになっていることを意味します。
この場合は、黒字化に向けた対策を早急に講じる必要があるでしょう。
アパート経営は赤字になりやすい?
アパート経営では、アパートの空室率が30%程度に達しないと、赤字になる可能性は低いと考えられます。一定の需要がある物件で健全な経営をしていれば、空室率は5%程度になると見込まれるため、基本的には赤字になりにくいでしょう。
例外的に、健全な経営でも赤字になるケースとしては、アパート経営の初年度が挙げられます。初年度は、税金や手数料などアパート経営開始時にだけかかる経費があることから、赤字になるケースも珍しくありません。
アパート経営が赤字になる原因
アパート経営は本来赤字になりにくいため、特にキャッシュフローの赤字が発生している場合は、解決すべき問題があると考えられます。ここでは、アパート経営が赤字になる主な原因を見てみましょう。
空室が多い・長期化している
アパートの空室率が高いと、得られる家賃収入が減るため赤字になってしまいます。以下は、入居者が決まりにくい原因の一例です。
- 競合物件よりも賃料や初期費用が高い
- 間取りや設備がエリアのニーズに合っていない
- セキュリティ対策が不十分である
- アパートの存在が知られていない
また、清掃や修繕が行き届いていない、トラブルを起こす入居者がいるなど、物件に問題があると、入居者が決まってもすぐに退去してしまうでしょう。
ローン返済額が家賃収入を上回っている
アパート経営では、通常は家賃収入から毎月のローンを返済していきます。
しかし、見込みよりも家賃収入が少なかったり、毎月の返済額が多すぎたりすると、ローン返済額が家賃収入を上回り赤字化するでしょう。
見込みよりも家賃収入が少なくなる原因には、前項の空室の増加・長期化のほか、賃料設定が安すぎることも挙げられます。賃料設定を含め、現実的な収支計画を立てることが大切です。
なお、アパート経営に利用できるローンについて詳しくは、以下の記事をご覧ください。
アパートローンとは?審査基準や利用する際の注意点をまとめて解説
減価償却期間が終了した
減価償却費は、アパートを取得してから何年にもわたって経費に計上可能です。実際の現金支出をともなわなくても経費計上できるため、節税効果があります。
しかし、アパート経営期間が長い場合は、いずれ減価償却期間が終了します。例えば、給排水や衛生設備などは15年、また建物本体であれば構造によって異なりますが、20~47年です。これらの期間が過ぎると減価償却費を経費計上できなくなり、税負担が増加して赤字になることがあるでしょう。
アパート経営で節税するには?所得税・相続税・贈与税の節税対策や効果
アパート経営の赤字が発生した時の対処法
アパート経営が赤字になる原因を踏まえ、ここでは黒字化するためのポイントなどを紹介します。
確定申告時に損益通算をする
比較的簡単な赤字対策として、確定申告時に「損益通算」をすることが挙げられます。損益通算とは、アパート経営での不動産所得が赤字になった場合に、別の給与所得や事業所得の黒字と相殺することです。
例えば、給与所得が1,000万円(黒字)、不動産所得が-900万円(赤字)だった場合、課税所得を「1,000万円-900万円=100万円」に圧縮できます。その結果、所得税や住民税の節税が可能になり、支出負担が減るでしょう。
参考:損益通算|国税庁
空室対策を講じる
前章で解説したとおり、アパートの空室率が高いのは、賃料設定や住宅設備、管理状態、集客方法といった、さまざまな原因が考えられます。したがって、ニーズへの適合や競合物件との差別化など、多角的な視点で空室対策を講じる必要があります。
また、アパートの管理運営を、賃貸管理に強い不動産会社に依頼する、あるいは現在依頼している会社から乗り換えてみることもポイントです。
ローンの返済比率や借入期間を見直す
専門家に相談しアパート経営の収支計画を見直したうえで、借り入れ先の金融機関に、金利条件の見直しや借入期間の延長を相談してみるのも一案です。毎月のローン返済額が適正になれば、キャッシュフローを改善しやすくなるでしょう。
なお、これからアパート経営を始める方は、自己資金を十分に用意し、融資額を減らすことも赤字対策として重要です。
アパートを売却する
赤字の改善が難しい状況であれば、アパートを売却してしまうのも手です。具体的には、建物をそのままの状態で売却するパターンや、更地にして土地を売却するパターンがあります。
特に、経営が赤字の状態で、建物の修繕も高額になると見込まれる場合は、更地化して売却するほうがより多くの利益を回収できるかもしれません。専門家の意見をもとに、納得の行く形でアパートの売却を進めましょう。
アパート経営を含め、不動産投資をやめる際のポイントや手順については、以下の記事を参考にしてください。
不動産投資をやめたいと思ったら|対処法ややめるタイミング、売却手順を紹介
まとめ
アパート経営では、空室率が高い場合や、家賃収入に対するローン返済額が多い場合などに、赤字になってしまうことがあります。
確定申告時に損益通算するだけでなく、空室対策を講じたり、ローンを含めた収支計画を見直したりして、根本的な赤字の原因を解決することが重要です。赤字の改善が難しい状況であれば、アパートの売却も含めて検討するとよいでしょう。
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記事の監修者:一誠商事編集部
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