アパート経営における維持管理費の一つに、修繕費があります。修繕費は経年劣化するアパートの補修や、入居者が退所する際に発生する修繕に充てられる大切な費用です。適切に修繕を行うことで、マンションの生活環境は改善され、その資産価値を維持できます。
今回は、アパートの修繕費の内訳や修繕積立金の目安について解説します。修繕費が足りずに追加で資金を徴収しなければならなくなった、必要な修繕を行えなかったということがないよう、費用の目安を知り、適切な積立を行いましょう。
目次
アパート経営にかかる4つの修繕費
アパート経営にかかる修繕費は、目的別に原状回復費、補修費、予防修繕費、大規模修繕費の4つに分けられます。それぞれの概要をみていきましょう。
原状回復費
原状回復費とは、賃借人が退居した際のハウスクリーニングや修繕にかかる費用です。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」によれば、賃借人の通常の使用により生ずる損耗の補修・修繕にかかる費用は賃貸人が負担するとされています。つまり、賃借人が故意あるいは不注意で傷を付けたり壊したりしたもの以外は、賃貸人が原状回復する義務を負います。
原状回復費は賃借人が退居するたびに必要になり、クリーニング・修繕する部分の広さや部屋数によって費用は変わります。目安としては、1件当たり数万円~20万円程度かかるとみておけばよいでしょう。
参考:原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)|国土交通省
補修費
補修費とは、設備の不具合や突発的な事故などによる破損の修繕にかかる費用です。突発的に必要になるため、あらかじめ予備費として用意しておく必要があります。
補修費の目安は数万円から数十万円ほど。ただし、補修する箇所や補修内容によって費用は大きく変わります。補修費用が高額になる場合は、以降で解説する予防修繕費や大規模修繕費で対応することも検討しましょう。
予防修繕費
予防修繕費とは、建物の劣化を防ぐために行う点検や修繕にかかる費用です。予防修繕の例としては以下のようなものが挙げられます。
- シロアリの検査
- 薬剤散布
- 外壁・屋根の状態検査
- 設備・機器の入替
予防修繕を行うことで、建物の損耗を軽度に抑えることができ、次項で解説する大規模修繕費を削減することができます。費用の目安は数万円から数十万円程度です。1年1回、数年に1回など、定期的に費用がかかります。
大規模修繕費
大規模修繕費とは、12~15年周期で行われる大規模な修繕工事にかかる費用です。アパートに足場を設置し、屋根防水の補修・修繕、外壁の補修・塗装、建具の取替などを行います。修繕工事には数ヵ月ほどかかり、その準備にも時間を要します。
工事にかかる費用はアパートの規模や工事内容によりますが、1回の工事に数百万円~数千万円かかるケースが多く、計画的な資金確保が重要となります。
【修繕箇所別】アパートにおける修繕のタイミングと費用の目安
アパートの主な修繕箇所と修繕のタイミング、費用相場を紹介します。以下の表を参考に、必要な修繕をチェックしておきましょう。
ただし、ここで紹介する費用や修繕の実施時期はあくまで目安です。実際にかかる費用は状況によって異なりますし、以下の表より早い段階で修繕が必要になる可能性もある点に注意してください。
修繕箇所 | 実施時期 | 費用の目安 |
---|---|---|
エアコン | 7~10年目 | 修理:1万5,000円~交換:5~15万円 |
キッチン | 8~10年目 | 修理:1,000円~交換:5万円~ |
クッションフロア | 8~12年目 | 3,000~5,000円/平米 |
給湯器 | 10~12年目 | 修理:7,000円~2万円交換:10万円~ |
ユニットバス | 10~15年目 | 修理:5~20万円交換:50万円~ |
トイレ | 10~15年目 | 修理:5,000円~交換:3万円~ |
アパート修繕の実施には計画的な修繕費の積立が大切
アパートの修繕には百万単位で資金が必要になるケースがあります。必要な修繕を確実に行うためには、修繕費を予測し、計画的に積み立てる仕組み作りが大切です。修繕積立金の概要と目安を解説します。
修繕積立金とは
将来予想される修繕工事費用を、長期間にわたり計画的に積み立てたものが修繕積立金です。
アパートの修繕費は高額になることが多く、修繕が発生するたびに費用を捻出するのは現実的とはいえません。修繕積立金を用意しておくことで、修繕費不足により必要な修繕が行えないという状況を防げます。
修繕積立金の目安
国土交通省の「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」では、木造10戸(1K)および木造10戸(1LDK~2DK)の修繕時期・費用は以下のように示されています。
木造10戸(1K)における修繕時期・費用イメージ
築年数 | 修繕箇所 | 修繕費用 |
---|---|---|
5~10年目 | ベランダ・階段・廊下(塗装) 室内設備(修理) 排水管(高圧洗浄等) |
戸当たり約7万円
(棟当たり約70万円) |
11~15年目 | 屋根・外壁(塗装) ベランダ・階段・廊下(塗装・防水) 給湯器等(修理・交換) 排水管(高圧洗浄等) |
戸当たり約52万円 (棟当たり約520万円) |
16~20年目 | ベランダ・階段・廊下(塗装) 室内設備(修理) 給排水管(高圧洗浄等・交換) 外構等(修繕) |
戸当たり約18万円 (棟当たり約180万円) |
21~25年目 | 屋根・外壁(塗装・葺替) ベランダ・階段・廊下(塗装・防水) 浴室設備等(修理・交換) 排水管(高圧洗浄) |
戸当たり約80万円 (棟当たり約800万円) |
26~30年目 | ベランダ・階段・廊下(塗装) 室内設備(修理) 給排水管(高圧洗浄等・交換) 外構等(修繕) |
戸当たり約18万円 (棟当たり約180万円) |
合計 | 戸当たり約174万円(棟当たり約1,740万円) |
木造10戸(1LDK~2DK)における修繕時期・費用イメージ
築年数 | 修繕箇所 | 修繕費用 |
---|---|---|
5~10年目 | ベランダ・階段・廊下(塗装) 室内設備(修理) 排水管(高圧洗浄等) |
戸当たり約9万円 (棟当たり約90万円) |
11~15年目 | 屋根・外壁(塗装) ベランダ・階段・廊下(塗装) 給湯器等(修理・交換) 排水管(高圧洗浄等) |
戸当たり約64万円 (棟当たり約640万円) |
16~20年目 | ベランダ・階段・廊下(塗装) 室内設備(修理) 給排水管(高圧洗浄等・交換) 外構等(修繕) |
戸当たり約23万円 (棟当たり約230万円) |
21~25年目 | 屋根・外壁(塗装・葺替) ベランダ・階段・廊下(塗装・防水) 浴室設備等(修理・交換) 排水管(高圧洗浄) |
戸当たり約98万円 (棟当たり約980万円) |
26~30年目 | ベランダ・階段・廊下(塗装) 室内設備(修理) 給排水管(高圧洗浄等・交換) 外構等(修繕) |
戸当たり約23万円 (棟当たり約230万円) |
合計 | 戸当たり約216万円(棟当たり約2,160万円) |
一般的に、賃貸物件の場合は家賃収入の約5%を修繕積立金にするのが良いといわれています。しかし、家賃相場は地域によって変わりますし、建物の設備によっても必要な積立額は異なります。
上記の国土交通省が示した目安や、これまでに記事内で紹介した費用の目安を参考にしながら修繕費を積み立てていきましょう。
アパート修繕を適切に実施するためのポイント
アパートの修繕には専門的な知識と技術が必要になります。そのため、修繕に関するノウハウを持っている施工会社や管理会社などの専門家に相談しながら、修繕を進めていきましょう。
また、定期的な点検や細かい修繕により、突発的な修繕発生リスクを抑えられます。数年に一度点検するよりは、毎年定期的に点検を行い、必要な修繕に素早く対応できるようにしておきましょう。大きな修繕が必要になるまえに気付いて対応すれば、全体の修繕費を抑えることにもつながります。
修繕計画も定期的に見直しておきましょう。アパートの修繕計画は長期間にわたるため、計画の途中で変更を余儀なくされる場合もあります。10年、20年先を見越しながら計画を変更し、長く快適に生活できる環境づくりをしていきましょう。
まとめ
修繕費はアパート経営を健全に行っていくうえで欠かせない費用です。修繕費を適切に積み立て、アパートを利用している方が住みやすい環境を整えるとともに、アパートの資産価値を維持していきましょう。
修繕費の目安は、アパートの規模や付帯設備によって変わります。修繕費の目安がわからない、修繕の手順を知りたいという場合は、専門家へ相談するのがおすすめです。
一誠商事では、建物の管理や点検、リフォームなどの業務を承っています。アパートの修繕でお困りの場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
管理戸数実績は北関東エリア1位
入居者募集から管理運営までサポート
一誠商事では、一戸建て・分譲マンション・集合住宅等の
賃貸管理業務が豊富にあります。入居者募集もサポートさせて
いただきますので、お気軽にご相談ください。


記事の監修者:一誠商事編集部
一誠商事株式会社が運営する情報サイト編集部。
不動産売買・賃貸経営・土地活用・不動産相続から快適な暮らしや住まいのことまで、不動産に関する幅広いお役立ち情報を発信しています。
創業50年、茨城県南・県央エリアで
地域密着型の不動産会社
一誠商事は、創業50年を迎えた地域密着型の不動産会社です。賃貸・管理・売買・保険・リフォームを取り扱っており、お客様のお悩み事をワンストップで解決いたします。
所有しているアパート・マンションの空室が多くて困っている、空き家の管理を依頼したい、自宅を売却したい、住み替えを検討している等、不動産に関することならなんでもご相談ください。
