賃貸併用住宅は、オーナーが暮らす部分と第三者へ貸し出す部分を併せ持つ戸建て住宅です。具体例としては、1階部分をオーナーの自宅、2階部分を賃貸住宅とするといった使い方をします。
賃貸併用住宅を建てて長く賃貸経営を行うためには、将来起こり得るリスクとその対策を知っておくことが大切です。
今回は、賃貸併用住宅経営を開始してから10年後のリスクを紹介し、それを踏まえた事前準備や対策について解説します。
賃貸併用住宅については、以下の記事でも紹介しています。
アパートを経営しながら自分も住むのは損か得か?メリット・デメリットを解説
目次
賃貸併用住宅経営の10年後のリスク(1)収支の悪化
賃貸併用住宅経営で10年後に考えられるリスクとしてまず挙げられるのは、収支の悪化です。以下で3つのケースを解説します。
空室により家賃収入が減るケース
賃貸併用住宅を建てた直後には入居者が集まっても、10年ほど経つと空室期間が長くなることがあります。
建物が老朽化して家賃の額と見合わなくなった、周辺にマンションやアパートが増えてきた、長い空室期間のために部屋の状態が悪くなった、などが要因です。
なお、経営開始直後から入居者が現れない場合は、そもそも立地が賃貸併用住宅に向いていなかった、間取りや設備が良くなかったという理由も考えられます。
空室期間が長くなると収入がないまま費用だけがかさみ、収支が悪化します。
老朽化により家賃が下がるケース
築10年程度では一般的な住宅ならリフォームは不要です。しかし、外壁や内装クロスなどの汚れが気になり始めるのは築10年を過ぎた頃です。クロスは全面張り替えが必要になるほど劣化している場合もあります。
また、水回りに傷みが見え始めるのも10年目以降です。キッチンではコンロの不具合や排水管の詰まり、洗面所では床材の劣化、浴室では金属部分の腐食などが発生し始めます。
このように老朽化が進むと当初設定していた家賃のままでは入居者が集まらなくなり、家賃を下げざるを得なくなるでしょう。
修繕費用がかさむケース
入居者が入れ替わる際には、賃貸併用住宅でも賃貸アパートや賃貸マンションなどと同様に原状回復が必要です。クロスの張り替えや設備の交換などのうち、敷金から出せない部分には費用がかかります。
定期的なメンテナンスをせずにいると老朽化の進行が早くなり、想定より修繕費用がかさんでしまいます。加えて自然災害の発生により修繕が必要になるリスクがあることも否定できません。
修繕にかかる出費で収支が悪化する可能性は考えておく必要があります。
賃貸併用住宅経営の10年後のリスク(2)売却しにくい
10年後までに収支が悪化して、賃貸経営が継続できなくなった場合、賃貸併用住宅を手放すことを考えるかもしれません。10年経つ頃にオーナーが引っ越さなければならなくなった場合にも、売却を考えるでしょう。
しかし、賃貸併用住宅には売却しにくいというデメリットがあります。自宅を購入したい人、収益物件が欲しい人はそれぞれいても、賃貸併用住宅を持ちたい人は見つかりにくいためです。
また、賃貸部分だけが不要になった場合でも、オーナーが新しい住まいを探さなければならないため売却しづらいという側面もあります。
賃貸併用住宅経営の10年後を見据えた事前準備
リスクを回避するためには、住宅建築に先立ち、10年後、20年後まで長い目で見て賃貸経営の事前準備をすることが大切です。以下では、具体的にどのような準備をすれば良いか解説します。
ターゲットを明確にする
空室リスクを減らすためには、賃貸併用住宅を建てる段階で、入居して欲しいターゲットを明確にしておくことが大切です。
入居者層によって住まいの好みは異なります。絞り込んだターゲットが魅力的だと感じる間取りや設備、デザインを取り入れることにより、入居希望者へのアピール度を高めることが可能です。
建築予定地がどういう特徴を持つ土地で、どういった層の人たちが多いのかチェックし、ターゲット層の人気を集めるような物件になるよう検討しましょう。
長期的な収支計画を立てる
賃貸併用住宅経営にとって最初の10年間は重要な期間です。その間には入退去や原状回復、新しい入居者の募集などをひととおり経験するからです。
安定した賃貸経営をするためには、少なくとも10年後までの収支計画を立てたうえで始める必要があります。
どの程度の家賃が妥当で、その家賃でどれくらい収入が得られるのか、空室期間の発生や家の老朽化にともなう家賃下落なども考慮してシミュレーションしておきましょう。
支出項目には物件の建築費用、修繕費用、火災・地震保険料、各種税金・手数料、住宅ローンの利息などがあります。そのほかにも、賃貸部分の管理を管理会社に委託する場合には管理委託費が、入居者募集の際には広告費がかかります。
修繕の負担に対しては、経営当初から毎月一定額を修繕費として積み立てていくと良いでしょう。
出口戦略を考える
経営がうまくいかなくなった時に物件を売却するか転用するか、出口戦略をあらかじめ決めておくことも重要です。
賃貸経営をやめた際に賃貸併用住宅を二世帯住宅として使用する場合には、自宅部分と賃貸部分との隔壁などをあとから動かせる設計にしておけば、家のつくりを変えて対応できます。
売却を考える場合は、自宅部分に特殊な間取りを採用しないようにしておきましょう。一般的に人気の高い間取りにしておけば賃貸併用住宅として利用する人が買いやすいほか、自宅部分も賃貸に出す前提で賃貸物件としての売却も可能になります。
自己資金を確保する
賃貸併用住宅には住宅ローンが利用できるため、家賃をローン返済に充てる目的で賃貸併用住宅を検討する方もいるでしょう。
その場合、見込んでいたほどの家賃収入が得られなければ、ローンが返済できなくなるおそれがあります。また、家賃をすべてローン返済に回していたのでは、突発的な支出に対応できなくなってしまいます。
毎月の住宅ローン返済額を抑えるために、ある程度の自己資金の準備は必要です。
賃貸併用住宅経営で失敗・後悔しないための対策
経営に失敗して賃貸併用住宅を建てたことを後悔しないようにするためには、それなりの対策が必要です。ここではポイントを3つ紹介します。
管理会社に委託する
賃貸併用住宅経営を10年後も安定して続けるためには、管理会社に業務を委託することをおすすめします。手数料の支払いは必要ですが、清掃や点検・修繕の手配、家賃の管理などを任せられるので、オーナーの負担は減ります。
また、クレーム対応を管理会社に任せれば、入居者とのトラブルを避けることができて安心です。
委託する業務の範囲や内容は、オーナーの希望や管理会社によって異なります。しっかり管理してくれる会社に委託すれば、入居者募集や入居審査の適正な実施によって空室率が下がり、家賃収入が安定することも期待できます。
資金計画を定期的に見直す
事前に立てた収支計画のとおりに10年、20年と経営が続くことはほとんどありません。
空室率の上昇や家賃の変更、住宅ローン金利の変動などで当初に立てた計画の前提は変わるため、収支計画の定期的な見直しが賃貸経営成功の秘訣となります。
地域の事情が変わったことにより入居者のニーズが変化して空室率が高まることもあるでしょう。収支を改善するために必要であれば、家賃の引き下げだけでなくリフォームを検討すべきケースもあり得ます。
オーナー自身の暮らしやすさも大切にする
賃貸併用住宅は、オーナーにとってマイホームです。収益を上げるために自分自身が快適に暮らせない状態になるのでは、元も子もありません。
プライバシーを確保できるよう出入りの導線を分ける、互いの音が気にならない構造を採用するなど、オーナー自身の暮らしやすさを守るよう工夫しましょう。
入居者対応に時間を割くことで生活が乱されないようにするためには、管理会社に業務を委託するといった方法が有効です。
まとめ
賃貸併用住宅を経営して10年後に考えられるリスクとしては、空室の発生や家賃下落、想定外の修繕費による収支悪化や、売りたい場合に売れにくいことが挙げられます。
リスク回避のためには、先を見越した収支計画とその見直しが必要です。また、入居者層のニーズに合致し、かつ出口戦略にも沿った建物にする工夫が求められます。
賃貸併用住宅経営においては、発生する業務を管理会社へ委託してオーナーの負担を減らすことが可能です。
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記事の監修者:一誠商事編集部
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