農地を宅地にして売る5ステップと知っておくべき注意点を解説

「田んぼや畑を相続したが使い道がない」「持っているだけで管理費用や税金がかかるので手放したい」とお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか?

しかし、農地を農地のまま売ることは農地法による規制があり、需要も低いため難しいです。そこで考えられる手段は、農地を宅地にして売却する方法です。農地を宅地に売却するためには条件がありますが、その場合、外国人でも土地を購入できるようになります。

この記事では、農地を宅地として売却するための必要な基礎知識と売却のための5ステップ、さらに知っておくべき注意点を解説します。農地を宅地にして売却したいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。

農地を宅地にして売る5ステップと知っておくべき注意点を解説

農地の売却は農地法で規制されている

農地の売却や賃借、農地以外に利用することは、農地法によって規制されています。以下では、そもそも農地法とはなにか、どのようにすれば農地を売却できるか解説します。

農地法とは

農地法とは、田んぼや畑などの農地の売買や賃借、農地以外への転用を規制する法律を指します。農地は日本国内の食料自給率にも関わるため、国にとって重要な土地です。

そのため、農地が適切に利用されるように、農家や農業参入者以外には自由に売却できないように規制されています。

宅地に転用して売れば、売る相手に条件はなくなる

農地を農地として売却する際、需要が少ないため売却価格が安いケースが多くなります。農地を宅地に転用する場合、農地のまま売却するケースとは異なり、買主様に条件がありません。そのため、農地のまま売却するよりも売却しやすくなる傾向にあります。

しかし、宅地に転用するためには「農地転用許可」を得て、地目変更手続きを行う必要があります。このように宅地に転用する場合、手続きや申請などが必要となります。

農地は宅地として1~2ヶ月程度で売却可能。ただし条件がある。

農地は宅地に転用できます。転用とは、地目を農地から宅地などに変更することを指します。農業委員会に申請を行い、都道府県知事または指定市町村に許可を得ることが必要です。申請をしてから許可が降りるまでには、一般的に1ヶ月半〜2ヶ月が目安とされています。

また、土地を宅地転用するためには条件があり、「立地基準」と「一般基準」の2つをクリアしなければいけません。以下では、宅地転用の条件「立地基準」と「一般基準」を解説します。

立地基準とは

立地基準は、農地区分により転用許可の有無を決めます。優良で大規模な農地ほど許可がおりにくいです。逆に、市街地に近い農地であるほど許可されやすい傾向にあります。

農用地区域内農地や甲種農地、第1農地は原則として宅地転用できません。

区分 内容 宅地転用
農用地区域内農地 農地として利用するべき土地に設定している ×
甲種農地 良好な営農条件を備えている農地。宅地への転用は難しい ×
第1種農地 営農条件を備えている農地。原則、農業に関わる施設建設のみ転用が許可される ×
第2種農地 市街地化が見込まれている地域にある農地
第3種農地 既に市街地化した地域にある農地

一般的に甲種農地や第1種農地は、宅地転用できませんが、例外的に宅地転用にできる場合があります。

  • 地域農業の振興に関する地方公共団体の計画に基づく施設
  • 農村産業法、地域未来投資促進法等による調整が整った施設
  • 農業用施設、農産物加工、販売施設
  • 土地収用事業の認定を受けた施設
  • 集落接続の住宅等(甲種農地・第1種農地以外の土地に立地困難な場合)

このように、宅地転用できる条件は細かく条件が定められているため、自分の農地がどれに分類されるか事前に確認しておきましょう。

一般基準とは

一般基準とは、具体的な転用目的がなく、投機目的や資産保有目的のために農地の取得を認められないことを指します。

資金力や信用の有無、転用する農地の関係権利者からの同意、また転用後の農地で事業を運用できる見込みがあるかどうかが判断基準となります。これらの条件をクリアできる場合のみ、許可を申請して宅地転用が可能です。

農地を宅地に転用して売却する5ステップ

農地を宅地転用して売却する際、以下のステップが必要です。ステップが前後する場合もありますが、大幅に変更することはないため、ステップを確認し宅地転用に活かしましょう。

  1. 不動産会社に売却依頼する
  2. 許可を条件に売買契約を締結
  3. 農業委員会に転用許可申請を行う
  4. 許可前に所有者移転登記の仮登記を行う
  5. 許可後に所有者移転登記(本登記)・代金精算を行う

①不動産会社に売却依頼をする

農地から宅地転用して売却する場合、不動産会社に売却依頼をしましょう。一般的な物件の売買とは異なり、転用許可申請などの手続きも必要となります。そのため、農地売却の実績が豊富な不動産会社を選ぶことが重要です。

②許可を条件に売買契約を締結

農地のまま売却する場合と同様に、農業委員会へ申請が許可された場合のみ買主様と売買契約を締結できます。宅地転用の許可が得られなかった場合、契約が破棄になることもあるため注意しましょう。

③農業委員会に転用許可申請を行う

買主様と売買契約を締結後、農業委員会に転売許可申請が可能です。農地転用して売却する際は、農地法第5条による転用許可を受ける必要があります。申請の際は以下の書類が必要です。

  • 許可申請書
  • 土地の登記事項証明書
  • 位置図
  • 公図の写し
  • 事業計画書
  • 土地利用計画書
  • 資金証明書

専門的な書類が多いため、行政書士に依頼する方も多いですが、ご自身で手続きしても問題ありません。必要となる書類は自治体により異なるため、近隣の自治体の必要書類を確認しておきましょう。

また、農地転用申請にかかる手数料の相場は、届出の場合が3~5万円程度、許可の場合は6~8万円程度です。これは、提出に必要な書類を揃えるための手数料で、申請自体に費用はかかりません。

申請から許可の決定までにかかる期間は、農地のまま売却する場合と大きな差はなく、約2〜3か月です。

転用許可は農地の場所や広さにより異なり、農地面積が4ha以上であれば農林水産大臣の許可が必要となります。不動産会社に相談してから許可申請をしましょう。

④許可前に所有者移転登記の仮登記を行う

売買契約を締結後、所有者移転登記の仮登記を行います。農地売却と同様、仮登記は必須条件ではありません。しかし、後々トラブルを防ぐためにも買主様が仮登記を行うケースが多いです。

⑤許可後に所有者移転登記(本登記)・代金精算を行う

農業委員会により売却の許可がおりた際、転用許可書を法務省に提出し、許可証が交付されます。所有権移転登記を行い、買主様から代金の受け取りをして取引完了となります。

知っておくべき注意点

農地を農地転用して売却する際、注意しておくべきことがあります。

  • 宅地化する前に売却できない
  • 宅地化後に土地に手を加えられない
  • 土地が大きすぎると開発許可申請が必要になる
  • 場合により許可を受けるまで長期間かかる可能性がある

注意点を守らなければ、農地転用の許可が剥奪されることもあります。また、農業振興地域(農振)の場合、指定解除の申請が必要なため、約1~2年の期間を要する可能性があります。注意点を理解し、農地転用に臨みましょう。

農地を宅地に転用して売却するなら経験豊富な不動産会社に相談

本記事では、農地を宅地転用して売却する方法と注意点について解説しました。結論からいうと、使い道のない農地を宅地に転用して売却することは可能です。宅地転用することで制限がなくなり、早く有利に売却できる可能性が高くなります。

しかし、農地を宅地転用する際は、農地ゆえに売却のハードルが高いため、一度不動産会社に相談してみると良いでしょう。

一誠商事は、売却に適したご提案をさせていただきますので、ぜひお気軽にご相談ください。

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記事の監修者:一誠商事編集部

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