茨城県南で家を建てようと土地を探していると「10年特例用地」といった表示を見かけます。土地の金額をみると他の場所に比べて割安…。当社にご連絡をいただくお客さまの中にも「予算に見合うのですが、この10年特例でわたしも家を建てられますか?」というご相談をいただきます。

今回はこの「10年特例」についてご紹介をさせていただきたいと思います。

予算に見合う土地に「10年特例」とあったがこれは何?

茨城県南で土地を探していると、購入条件などの部分に「10年特例用地」と書かれている物件をみかけるかと思います。土地代が比較的安価で大きな敷地になっていることが特徴です。

安価に買えるならば購入したいと思う方は多いと思います。しかしこの「10年特例」とはどういったものなのでしょうか?また、自分はその対象になっているのか?は気にするところですよね。

この特例を説明する上で、日本における「土地」の種類をご紹介しします。
国の定める都市計画法( https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=343AC0000000100#18 )によって、土地は「市街化区域」と「市街化調整区域」の2種類に分けられています。

都市計画法においてこの区分けは下記の定義となっています。

都市計画区域について無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため必要があるときは、都市計画に、市街化区域と市街化調整区域との区分(以下「区域区分」という。)を定めることができる。ただし、次に掲げる都市計画区域については、区域区分を定めるものとする。

■市街化区域
市街化区域は、すでに市街地を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域とする。

■市街化調整区域
市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域とする。

今回話題の「10年特例」は、簡単に言えば「市街化調整区域に家を建てられるようになる特例」なのです。

ですが、都市計画法に記載のとおり「市街化調整区域」は市街化が進まないように抑え、人が住むための街づくりを行なう予定がない区域です。むしろ農地や田畑、森林を守るためのエリアであり、許可を得なければ原則として家を建築することはできません。

しかし逆に言えば「許可」を得ることができれば、土地の「開発(=特定工作物の建設を除けば、山林や水田などの土地を住宅用の土地にするための宅地整備工事)」を行なうことが可能になるのです。このための特例が「10年特例」となります。

しかしこの特例を適用するためには、いくつかの条件があります。

土地への条件
  • 既存集落内であり、50個以上の建築物が連たんしているものであること。
  • この連たんの条件は、建築物と建築物の敷地相互間が70mメートル未満で、50戸以上の住宅が含まれているもの。
購入のための条件
  1. 市町村の区域内の大字(おおあざ)等の区域内又は、隣接する大字等の区域に線引きの日前に本籍又は、住所を有していたもの。
  2. 市町村の区域内の大字等の区域等内に10年間以上居住していた者
  3. 1に該当する者の2親等以内の血族又は1親等の姻族
購入者の状況
  • 婚姻により独立した世帯を構成する場合や退職又は転勤等により転居せざる得ない場合など自己用住宅を必要とするやむを得ない理由がある

これらを満たす必要があります。
この「10年間以上居住していた」部分から「10年特例」の名前が付きました。

つまり売りに出ている土地には「10年特例」が適用されるとしても、ご購入をいただくお客様がその条件を満たしていない場合、土地の購入は可能なのですが「住宅を建てる」ことができない点にご注意いただきたいと思います。

整理をすると、

市街化調整区域
  • 購入は誰でも可能
  • 要件を満たす人だけが住宅の建築が可能

ということになります。

このように厳しい条件があるのですが、この特例は元々の起こりが、農家の分家制度から始まっているからなのです。
農家の次男が家を建てる、三男が家を建てるといった場合、それまで自分が住んでいた母屋や田んぼ、畑から比較的近めの場所に家を建てることで続けて農作業ができるようにする。それを後押しするために「通常は住宅を建築できない市街化調整区域にも家の建築を許可します。」という制度がこの10年特例の大元でした。
そのため、前述のような「土地」「購入条件」「購入者の条件」などが厳しく決まっているのです。

茨城県以外でも「10年特例」はあるの?

この「10年特例」という名称は不動産業界で呼ばれるもので、正式には茨城県の県条例第6条第1項3号、「既存集落内の自己用住宅の取扱いについて」となります。

記載の通り、茨城県の条例になりますので、基本的には茨城県だけにある制度となります。
他の都道府県でも「市街化調整区域」に住宅を建てることを許可する近しい条例がなくはないですが、「10年特例」の特徴でもある「10年間在住」の条件がないことが多いようです(2021年9月6日現在)。

茨城県以外の方は、ご在住の県の条例を対象に「既存集落内」と「自己用住宅」をキーワードに調べてみていただければ、この「10年特例」と諸条件が異なっていても同様の制度があるかもしれません。一度調べてみていただければと思います。

「10年特例」のメリット・デメリット

この特例ですが、条件さえクリアできればメリットばかりのように見えます。
しかし前述の条件が満たされていたとしても、実は家を建てるのは更にいくつかの条件を満たすことが必要になります。

  • 購入をした土地から勤務が可能なこと(別荘的な利用方法を制限)
  • 予定地の面積が,おおむね200平方メートル以上500平方メートル以下であること。ただし、予定地及びその周辺の土地の状況を考慮して、やむ得ないと認めるときは、500平方メートルを超えることができる。
  • 自己用住宅の延べ面積が、おおむね200平方メートル以下であること。
  • 自己用住宅の高さが、10メートル以下であること。

といった土地や住宅への細かい条件も発生いたします。
またあくまで「本当は住宅建築不可だけど、条件によって住宅地にできるよ」というものであるため、実際に住宅を建てるには、

  • 開発許可を得る(これは建築許可を取ることとお考えください)
  • その土地の地目が「田」や「畑」の場合、「農地」と呼ばれますが、この場合には「農地転用」を申請し許可を得る

これらの手続きをして初めて住宅を建てる土地として利用できるようになります。

メリット

この「10年特例」のメリットとしてはなんといっても土地の価格が安価になるケースが多いことです。
元々が「市街化調整区域」です。住宅を建てるための場所ではないことから、土地としての評価が低いため、金額が安くなっているのです。そして農地や田畑であることから敷地面積としても広い区画となることが多いです。

デメリット

一方でデメリットもあります。

一つはメリットの裏返しですが、土地の評価額が安いため購入金額は安価になります。
それは裏を返すと住宅ローンを利用する場合に、金融機関の担保評価がどうしても低くなりがちだということです。

また生活インフラが整備途中の場合もあります。
具体的には井戸・浄化槽・プロパン・電気などを自分で準備する必要がある場合がある、ということです。

最後はこの制度は「10年特例の条件を満たした人」に対して適用される、ということです。そのため、茨城県内の行政区によって少しずつルールが改正されてきていますが、一度購入した後に売却する場合、同様に「10年特例の条件を満たす人」にしか売却ができない、ということです。

あくまでその場所に長年住みつづけている方が分家などの理由で「住宅を建てたい」、自分の土地があるのにも変わらず、「市街化区域」に土地を購入しないといけないことに対する救済処置であることへの認識も持っておく必要があります。

ですが、前述の通り、近年そのルールが行政区単位で変更されてきています。
一例として「水戸市」(2021年9月現在)では、購入者が行政の許可を受けることができれば「10年特例」対象外の方でも譲渡、賃借、再建築が可能となっています。(水戸市におけるこのルールは水戸市のサイト「水戸市市街化調整区域に係る開発行為の許可基準に関する条例等の改正について( https://www.city.mito.lg.jp/000271/000273/000288/kentikusidouka/takuchi/p021457.html )」をご確認ください。)

一誠商事でも「10年特例」の対象となる土地を取り扱っております。
今回のコラムをお読みいただき、ご興味をお持ちいただければ、最寄りの店舗までまずはご相談をいただければと思います。

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記事の監修者:一誠商事編集部

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